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【テレワークの壁】「経費精算」「領収書」のウソ、ホント。

経費精算
ビジネスパーソンが生涯で経費精算に費やす時間は平均52日間。
営業職や外勤社員であれば100日間になる(コンカー「サラリーマンの経費生産に関する実態調査」より)。

 紙の領収書を保管、台紙に糊付け、帳簿を作成する。あまり、やりがいのある仕事だとは言い難い──。  
また、新型コロナ感染症下では、ペーパーレスに対応できていない企業で「判子」「経費精算」のためだけに出社するということが発生している。  

アフターコロナにバックオフィス業務および経理業務はどうあるべきか。
東急ハンズ、メルカリでCIOを務め、現在はDX(デジタルトランスフォーメーション)のコンサルティングを手がけるロケスタ株式会社代表の⻑⾕川秀樹氏に話を伺った。


*調査企画:株式会社コンカー/調査対象:年収400万円以上のサラリーマン、309サンプル/調査方法:オンライン上でのアンケート調査調査期間:2016年3月3日~2016年3月4日

法的に判子は不要。なのに、求められる理由


──コロナ禍で、バックオフィス業務のDXを進める企業が増えている印象があります。
長谷川 コロナがあってもなくても、いずれは来ていた話ではありますが、社会全体の方向性としてDXへのニーズが高まっていますね。

 特によく聞く話が、契約書と経費精算のデジタル化です。契約書と経費精算は、DXのなかでも比較的取り組みやすい領域。

 まず、コロナで課題になっている電子契約の話をすると、VPN(仮想私設網)をひいて社外からこれらのシステムにアクセスできる企業もありますが、契約のために何が何でも出社して判子を押さないといけない企業も多い。

 こんなにテクノロジーが進んでいるのに、判子から逃げられない。「これはアホらしくないか」と多くの方が感じているわけです。

長谷川さん

──そもそも、契約書に判子を押す必要はあるのでしょうか? 最近は電子契約も登場しています。
長谷川 電子契約について複数の弁護士に詳しく聞いたのですが、結論から言うと、法的には判子に意味はありません。

 ではなぜ、判子が求められるのか。

 それは、裁判になったときに契約書の原本を提出する必要があるのですが、これまで一度も電子契約書が原本として提出されたことがないから。今まで事例がないために、「もし裁判になったときに電子契約書が認められないかもしれない」というのが、判子必要派の考え方です。
 法律には「電子契約がダメ」とはひと言も書かれていないのに、なかなか踏み出せない企業が多いんです。

電子契約に関する法律

──今後は、電子契約が広まるのでしょうか?
長谷川 その流れにあると思います。さくっと電子契約に切り替える企業もありますし、導入検討に長い時間をかける企業もあります。
 切り替える際に大事なのが、承認フローを整理することです。
 例えば、従来の業務フローでよくあるのが、営業が法務に契約書の捺印を申請して、上司が許可して、法務が捺印して原本が返ってくるというケース。

 これが電子契約になった場合、ボタン1つで承認ができるので、「最終的に誰が承認ボタンを押すか」をルール化しておく必要があります。上司なのか、法務なのか、はたまた社長なのかと。

 僕自身は、DX案件のご依頼をいただいたときに、やはり紙の契約書を求められることがあります。しかし、僕は電子契約にしたい。そこで、「僕は御社のルールにのっとり判子を押して郵送するから、御社もウチのルールにのっとり電子契約書で承認をしてください」と伝えています。
 大抵は「ダメです」と即答されます。その場合は、「このお願いが無理なら、社内DXプロジェクトを進めるのも難しいのでは。まずは契約書からデジタル化しませんか」と伝えています。

長谷川さん

次にデジタル化が進むのは「経費精算」


──判子に加えて領収書が求められる経費精算も、作業負荷がかかる業務です。
長谷川 コロナ禍では社員が経費を使う機会は減っていますが、経費精算も今後DXを進めるべき業務だと思います。

 紙の領収書を電子保存してもいいという、電子帳簿保存法に対応する企業は増えています。しかし、領収書を写真に撮ることのほうが手間になるケースもありますし、紙の領収書も一応残しておこうというケースもあるので、一周回って紙のままでいいじゃないかという本末転倒な議論もあります。
 DXという観点では、もう一歩進んだほうがいい。僕は「領収書レス」にならないと意味がないと考えています。

──領収書って、保管しておかなくても大丈夫なのでしょうか?
長谷川 税理士によって見解が分かれるポイントですよね。
 これについても、いろいろな税理士に「領収書の保存は必要ですか?」と聞きました。すると、「1.実質不要」「2.一定金額以上は必要」「3.全部必要」の3つのパターンの回答があったんです。
 ただ、おもしろいことに、「国税庁の調査が入ったときに、クレジットカード明細は経費性が認められるか?」という質問に対しては、全員が「認められる」と回答したんですね。

領収書をめぐる議論

 なぜ、こうしたねじれが生じているかというと、準拠する法律が異なるためです。

 「1.実質不要」という人は、「クレジットカード明細で経費性を認められるから、領収書はなくてもいい」という考え方。経費性を認めるために必要な「誰が使ったか」「日付」「金額」「どこで使ったか」という情報は、手書きの領収書より、データを改ざんできないクレジットカードのほうが証明性は高いといえます。

 「2.一定金額以上は必要」という人は、消費税法にのっとった考え方。「この経費に対して消費税を支払った、だから消費税納付時にこの差分を払います」という主張をする証拠として、「3万円以上は領収書を残しておく」としています。

 「3.全部必要」という人は、法人税法にのっとった考え方。「7年間領収書を保持しておく」と法人税法に書いてあるからというのが理由です。
 ちなみに、「消費税法と法人税法の考え方が矛盾するのでは?」という点については、「法人税法より消費税法のほうが上位概念だから」というのが「2.一定金額以上は必要」とする人の回答でした。

──長谷川さん自身は、どのパターンで管理していますか?
長谷川 僕の会社では、担当税理士から「クレジットカード明細でOK」と言われているので、領収書はもらっていません。
 手書きの領収書の場合、領収書の日付を空欄にして次月に精算を回したり、金額を変えたりといった小さな偽造ができますし、物理的に存在するが故に、不正や記載ミスなど、正確な経費精算ができない可能性があります。

 しかし、デジタルの場合は使用履歴が残ります。使用明細と自社の経費精算システムを連動させれば、「利用者」「日付」「金額」「加盟店」を記録できます。
 つまり、デジタルで管理すれば、改ざん、入力ミスが基本なくなります。
 現場の社員は経費精算書をまとめる作業がなくなり、経理は精算書と領収書を突き合わせる作業がなくなります。万が一国税庁の査察が入っても、電子データを渡すだけ。社員みんながハッピーになると思います。

経費精算改革

すべての決済をDXすることに意味がある



──企業によっては、法人カードを持つのは一部の決裁権のある人のみというケースや、部署単位で1枚のカードを共有するケースがあります。
長谷川 ありますね。しかし、法人カードは経費を使うすべての社員が持たなければ、本来のメリットが得られません。
 経費を多く使うのは現場社員ですし、社内の経費精算の負担を軽くするという意味では、上長だけが持っていては無意味です。また、一部の経費精算が社員の個人カードや現金で立て替えられることになり、経費性の信頼にグレーな部分が残ります。合理的に考えても、会社の口座からダイレクトに引き落とされたほうがいい。

 部署で1枚のカードを共有する使い方は、「誰が使ったか」という痕跡が残らないので、「クレジットカード明細が経費性を認められる」という部分が揺らぎます(※)。
 さらに、スピード感という点でもデジタルのほうが優位性があります。急な接待が入ったときに、紙の書類で経費申請して承認受けて現金を用意して、というステップを踏んでいると時間がかかりますよね。ビジネスがいったんストップしてしまう。

 その点、デジタルならすぐに手続きできますし、ルールを定めたうえで事後申請という方法もありだと思います。
 ※国際ブランドルールにもよるが「カード使い回し」は原則として禁止されているケースが大半。

経費精算

──社員が法人カードを持つことで、「不正利用をするのでは」という懸念が出てくるのでは?
長谷川 「社員が勝手にポルシェを購入したらどうしよう」とかね(笑)。確かに、社員が使い込む懸念を拭いきれない会社もあるかもしれませんが……冷静に考えてみてください。
 電子決済ではすべての使用履歴が残っていて、カード会社に電話をすれば店を突き止めて購入した物を確認できるわけです。あらゆる行動を会社に監視されて、悪さができない仕組みになっています。

 会社の承認ルールで「○円以上の場合は事前申請する」などと定めておけば、個人的に使い込む人はまずいないのではないでしょうか。
 それに、プリペイドカードはもちろん、クレジットカードの場合も、上限金額のコントロールは可能なはず。どのくらい管理に手間がかかるかはカードの提供会社によりますが、API連携で異なるサービスとつないでカスタマイズもできるカードもあります。
 役職や業務内容に応じて上限金額を定めて、承認フローをしっかり作っておけば、かなり使いやすくなるのではと思います。

経費精算

小売店を巻き込んでDXに取り組むべき


──長谷川さんが考える、経理業務の理想系とはどういうものですか?
長谷川 理想は、経費精算業務自体をなくす、つまりゼロにするということです。それには、大前提として、経費を使う先と自社がデジタルに対応していることが前提になります。
 例えば、東京のタクシーは電子決済に対応しているけれど、地方のタクシーはまだ現金のみというケースがありますよね。小売店なども同様です。
 利用する側の目線でいうと、企業のサラリーマンが利用する場所では、なんらかの電子決済に対応してくれるとありがたいです。

 あとは、今のクレジットカードの明細では、「利用者」「日付」「金額」「加盟店」のデータはとれますが、「何を買ったか」がわかりません。経費精算の作業では「お茶代」「車両代」などを1つずつ入力するのが、結構手間なんですよね。
 僕が考えている理想系としては、決済データと合わせて、レシートデータを加盟店から送ってもらえるといいなと。税務の世界では「レシート・イズ・キング」です。レシートがあれば、完全なる経費性が認められます。

 クレジットカード会社は「難しい」と言いますが、将来的には政策として小売店を巻き込んで、法律の制定を含めて仕組み化できると、本当の意味で経理業務のDXにつながっていくのではと思います。
 経費精算業務を楽しんでやる人は少なくて、多くの人は面倒だなと感じながら仕方なくやっている。経費精算の手間が減れば、その時間を本業に使うことができ、生産性を高めることができます。

 DXは会社全体の業務プロセスやビジネス構造そのものを変革する取り組み。電子契約や経費精算は小さなことに見えるかもしれませんが、多くの人が携わるだけに影響の大きい領域です。DXの第一歩として、まずこれらのデジタル化に取り組んでみるのも良いでしょう。

(構成:村上佳代 編集:野垣映二、木村剛士 デザイン:小鈴キリカ)

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